南砺市/飛騨市(富山/岐阜) 水無山(1505.6m) 2021年2月21日  カウント:画像読み出し不能

所要時間 6:19 除雪終点(駐車箇所)−−8:54 1073m峰−−9:04 林道−−9:18 林道を離れる−−9:36 谷−−10:46 1300m肩−−10:48 1310m(休憩) 11:05−−12:20 水無山 13:06−−13:36 1300m肩−−13:49 谷−−14:09 林道−−14:10 林道を離れる−−14:18 1073m峰−−14:54 除雪終点(駐車箇所)

場所富山県南砺市/岐阜県飛騨市
年月日2021年2月21日 日帰り
天候
山行種類積雪期の籔山
交通手段マイカー
駐車場千島集落内の除雪終点付近に駐車
登山道の有無無し(別ルートならありだが近年は登山道に繋がる林道入口までマイカーで入ることが困難であり、バイクか自転車が現実的な手段)
籔の有無積雪のため藪は皆無で無雪期の状態は不明
危険個所の有無無し
山頂の展望周囲に背の高いブナがあるため予想外に良くない
GPSトラックログ
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コメント富山/岐阜県境の山。以前は富山側から林道経由でマイカーで簡単に登ることができたが、近年はその林道へ繋がる車道のアクセスが極端に悪くなり、バイクか自転車でないと実質的に登れなくなってしまったため、雪がある時期に岐阜側から最短距離で登ることにした。直前に新雪が降ったはずでラッセル覚悟で入山したが、案の定雪質は安定せずスノーシューでの重雪ラッセルの連続で疲労困憊だったが、何とか山頂を踏むことができた。しかしこの山行の最中に右目の視覚異常が発生し、翌日には大幅に視力が低下し緊急入院にて治療しても視力が戻ることはなく視覚障碍者になってしまった。これ以降は岩登りなどリスクの高い山行はもう無理かもしれない




千島集落内の除雪終点 駐車箇所脇にトレース入口あり
明らかにスノーシューのトレースが続き楽勝かと思いきや トレースは尾根に向かわず水路で消滅
気温は+2℃前後 植林された尾根を登る。最初は足首程度のラッセル
792m標高点付近 標高910m付近。自然林の方がラッセルが深かった
標高950m付近の熊棚 標高1000m付近で再び植林帯に変わる
標高1073m峰 標高1060mで地形図に記載のない林道登場
開けた場所は重雪のラッセルがきつい! ヘアピンカーブで林道は上へ向かう
ヘアピンカーブで林道を離れてトラバース開始 谷へと急降下。帰りを考えて歩幅を狭めてラッセル
谷底。流れは完全に雪の下 反対側の尾根に取り付く
標高1150m付近 このブナだけ又に雪が乗っていた
標高1200m付近。唐松植林帯 標高1230m付近
標高1300m肩を越えてやっと傾斜が緩む カモシカのトレース。ここだけラッセルが楽できた
水無山へと続くなだらかな稜線 標高1310mで休憩。4時間半の連続ラッセルは疲れた!
標高1370m付近 標高1400m付近の沈みは脛まで。きついラッセルが続く
標高1450m付近 振り向けば自分のラッセル跡。一向に雪質は良くならずラッセル地獄
1460m峰から見た360度パノラマ展望写真
1460m峰から見た金剛堂山、白木峰
1460m峰から見た籾糠山、猿ヶ馬場山〜栗ヶ岳。昨年歩いた稜線。あの時は雪質最高だったなぁ
県境の1470m峰。ここへは登らず左折して山頂へ 1460m鞍部から見た水無山
もうすぐ山頂 水無山山頂。やっと着いた!
標識は雪面から1〜1.5mの高さ。雪のある時期に付けられたものだろう 山頂標識その1
山頂標識その2 山頂標識その3.少し離れた場所にある
水無山山頂から見た360度パノラマ展望写真(クリックで拡大)
標高1440m付近のラッセル跡。帰りは楽 標高1310mの往路休憩場所
谷からの登り返し。往路のトレースのおかげでらくちん 林道へ乗る。水平移動はラッセルが重い
尾根を降りて千島集落へ。水路へ至るトレースに合流 緩斜面を下る。無雪期は畑だろうか?
駐車箇所到着。本日はラッセル三昧で疲労困憊!


・水無山は富山/岐阜県境の山。岐阜側は現飛騨市(旧河合村)で、私にとっては旧河合村の地形図記載の山としては最後の未踏峰である。

・この山は富山県側から山頂西側まで車道が通じており簡単に登ることができた山であったが、現在では利賀側沿いの県道も楢峠を越える国道471/472号線も通行止めのため、林道入口である旧水無集落まで車で入ることは簡単ではない。唯一のルートは百瀬川から東俣谷沿いの林道経由で入るルートだが、ネットで調べると近年の大雨の影響かここ数年でここを車で通行した記録は発見できなかった。ネットで軽く検索すると2020年の登頂記録は皆無で、2019年の記録では「利賀飛翔の会」が開催した水無湿原観察会(6月9日)に参加してゲートの鍵を開けて県道から林道終点までバスで入って簡単に登った記録がいくつかと、MTBを使って林道終点まで入った記録があった。2020年に観察会開催の記録が無いのは近年の大雨で道路が崩れたのか、それともコロナの影響で開催を自粛したのか不明であるが、どちらにしても無雪期にマイカーを使った場合は相当な距離を歩く必要がある。

・そこで雪がある時期に岐阜県側から登ることを昨年秋の時点で考えていた。最短距離は旧河合村の千島集落。ここからすぐに尾根に取り付いて県境の1459m峰経由で山頂に至る計画だ。もっと効率がいいのは上ヶ島谷沿いの林道を上がって1本北側の尾根を登ることだが、おそらくこの林道は未除雪であることと林道から尾根に乗り移るためには上ヶ島谷を渡る必要があること、尾根末端付近はどこも急傾斜で雪質によっては相当苦戦が予想されたことなどからこのルートは諦めた。

・長野から旧河合村は遠い。こんな時は冬でも通行可能な安房トンネルは有り難い。うまい具合にこの日は気温が高くトンネル付近の道路でも凍結は皆無。周囲はまだまだ積雪が多かったが高山へ向けて下っていくと急激に積雪が減って水無山の積雪量が気になってくる。しかし国道41号線を離れて国道360号線付近に達すると周囲は真っ白で一安心。

・千島集落に入って道路の除雪状況を確認すると予想通り上ヶ島谷沿いの林道は起点から未除雪で、集落西端の民家の先で除雪終点。ここはどん詰まりなので駐車しても問題なさそうだ。ただしここで仮眠すると住人に不審に思われるだろうと国道に戻って広い路側で仮眠。国道だが夜中の交通量はゼロだった。

・翌朝、朝飯後に千島集落の除雪終点に移動し出発。冬装備はスノーシューに軽ピッケルとした。アイゼンは悩んだが集落内の雪質は締まりが無く、おそらく山の上も同様でアイゼンが必要な場面があってもツボ足で問題なかろうとの判断でアイゼンは持たないことにした。結果的にこれは正解であった。

・駐車箇所の除雪雪壁が低い箇所からトレースが奥へと延びているので利用させてもらう。明らかにスノーシューの跡で、もしかしたら昨日土曜日に水無山に登った人のトレースかと大いに期待した。トレースがあるのならラッセル不要で楽勝だろう。

・トレースを辿るとすぐに目的の尾根に到着するが、トレースは尾根を素通りしてそのまま巻いて進んでいる。トレースを辿ると雪が開けた水路で途切れており、どうも除雪等で水源に使っている水路の状況を住人が確認するためのトレースらしかった。残念。本日も山頂までのラッセルが決定だ。

・尾根に取り付くためトレースを離れると足首程度まで潜る重い雪。温度計を見ると夜明け前なのにほぼ0℃と気温が高めなので雪の締まりがないのは仕方ないが、この状況が山頂まで続くと打野山のように目的地まで達しないこともあり得る。まあ、今日は暗くなるまで動く予定なので時間はたっぷりあるが体力が持つかが問題だ。

・最初は植林帯が続く。幸い、北陸はまだ花粉は飛んでおらず目の痒みは皆無。すぐに体が温まり上下とも余分な衣類を脱いで身軽になってラッセル継続。所々で尾根の半分が自然林に変わるところがあり、一般則では日当たりのいい自然林の方が雪の締まりはずであるが、杉植林から自然林へ移ると逆に締まりがなく脛まで潜るようになる。どうやら残雪期前の気温が低い時期では新雪の積雪が葉で妨げられる植林帯の方が雪質がいいようだ。

・標高910m付近で一度植林が終わって自然林に変わるためラッセルがきつくなる。自然林ではあちこちに熊棚が見られたが、当然ながら今の時期には雪の上に熊の足跡は無い。目覚めるのは4月くらいだろうか。最近は熊鈴は鳴らしていない。

・標高1000m付近で再び杉の植林帯が登場しいくぶんラッセルが楽になる。1073m峰も杉の植林でピークを越えるともったいないが下り坂。1050m鞍部からの登り返しでは上部に樹林が開けた明るい場所が見え、そこまで登ると雪に埋もれた林道であった。帰宅後にグーグルアースの衛星写真で確認するとこの林道は荒町集落の対岸付近が入口で、標高1263m峰付近まで達しているようだ。山頂まで距離があるので無雪期の利用価値はあまり高いとは言えないだろう。衛星写真で見た山頂付近の植生はブナ林で地面付近は笹藪のように見えた。

・この林道は地形図に出ていないのでどこに向かうのか不明。現地では1060mの等高線に沿うように南北に走っていた。もしかしたら北側に進むと谷を越えて一本北側の尾根に通じているのではないかと予想。ここまでのラッセルからして多少の標高差を損しても距離を短縮するのが得策と痛感しており、できれば北側の尾根に乗り換えたいところ。よってここで林道を北に辿ってみることに。しかし期待は裏切られて林道は途中でヘアピンカーブで尾根の上を目指していた。でも雪で埋もれて藪は無いのでここで林道を離れてこのまま尾根北斜面をトラバースして北側の谷へ下ることにした。

・最初はできるだけ高度を落とさないようトラバースしていたが、徐々に傾斜がきつくなってきたことと大きな谷が行く手を遮って横断が面倒なため、谷の手前で急斜面を下ることにした。締まった雪ではスノーシューを脱ぐ必要がある傾斜だったが、今の雪質ではスノーシューでも脛まで潜ってブレーキがかかるので、スノーシューを履いたまま急斜面を下ることができた。帰りはここを登り返すので歩幅を意識的に狭めてラッセルしておいたが、そのおかげで帰りの登りではかなり楽ができた。

・谷底に下ると沢の流れは完全に雪の下で一面の雪原。この付近では滝のような危険な地形も皆無で簡単に対岸に乗り移ることができた。

・ここから正面の小尾根に取り付く。地形図を見たところ、この尾根は1310m肩から南東に落ちる尾根で間違いないだろう。これまでの植林尾根と違ってブナが林立した明るい感じのいい尾根だ。ただし傾斜はそれなりにあり、南向きでただでさえ緩い雪がさらに緩んでラッセルがきついこと! 既に出発から3時間半が経過していた。夏山なら下手をすれば常念岳山頂に到着している所要時間だが、同じ時間でも疲労度は雲泥の差で常念岳の方が遥かに楽だ。

・このままブナの自然林が続くのかと思いきや、気付くと標高1200m付近で唐松が混じっていた。こちらの尾根の植林は杉ではなく唐松だった。唐松は落葉するので今の時期は明るい。そのうちに植林が終わって再びブナの純林になった。

・やっと傾斜が緩むと1300m肩で、その先の1310m峰で休憩することに。出発から4時間半休憩無しでラッセルの連続で、さすがに今回の雪質では山頂まで無休憩は無理だ。この分では出発から山頂まで6時間程度かかりそうだ。

・この先は傾斜はずっと緩やかで伸びやかな稜線歩きだが、ラッセルは相変わらずでスピードが全く出ない。天気は文句無しの快晴だが気力、体力は下り坂。山頂までの標高差は僅か200mでもし道があれば30分の道のりだが、この重雪ラッセルではどれだけ時間がかかるのか予想が難しい。でも山頂までは休憩しないで歩き通そう。

・標高1400m付近で水無山山頂らしきなだらかなピークがやっと見えたが遠い(涙)。標高1440m付近より上部は尾根上のブナがほとんど無くなって展望のいい雪稜が続くが雪質は全く変わらず。1460m峰で大展望を堪能して進路を左に振って小鞍部へ。そして最後の登りだがここからブナ林が復活する。

・ラッセルの連続でやっと傾斜が緩んで山頂の一角へ到着。ここは南に張り出した雪庇ができていて、おそらく山頂付近の積雪量は3m前後あるのではなかろうか。その雪庇の最高点が水無山山頂だった。なだらかな山頂で雪庇のある南側はブナが無く展望がいいが、その他の方向はブナが林立して展望は良くない。そして最高点近くの細いブナの幹に手製の古い木製山頂標識あり。2本のブナにそれぞれ取り付けられていた。雪面からの高さは1m〜1.5m程度なので雪のある時期に取り付けられたものに違いない。最高点より東に離れたブナには大きめの古い木製山頂標識を発見。3つの標識とも文字が完全に消えているか薄っすら残っている程度で年月を感じさせる。それとも気象が厳しく劣化が早いのかも。

・先ほどの休憩から約1時間半かかっており山頂でもたまらず休憩。快晴で温かく休憩にはピッタリ。帰宅後に所要時間を確認したら6時間であった。このラッセルで6時間なら頑張った方だろう。6時間あれば夏山なら鹿島槍山頂に立てるが、体力的には今回より遥かに楽だ。何せ登山口から休憩無しで山頂に立てるくらいだから。もっと遅い時期、3月中旬くらいなら雪も落ち着いて早朝なら締まって快適に歩けるようになるかもしれないが、残雪期のおいしい時期には行きたい山がいくつもある。今年は積雪が多いので例年より残雪を楽しめる時期が長くなることを期待しよう。

・往路で6時間かかっているのであまりのんびり休憩しているわけにもいかない。帰りはほとんど下りだしラッセルが無いので半分程度の3時間で下山できるだろうか。午後1時過ぎに出発した。

・往路の自分のトレースはほぼラッセル不要で非常に助かった。日が高くなって気温が上がり雪がさらに緩んだり、下りで足へかかる衝撃が登りより増えることもあって、往路の足跡を踏んでも沈むこともありラッセル皆無とはいかないが、往路のラッセルとは雲泥の差だ。往路の休憩場所まで僅か30分しかからず往路の約1/3の所要時間だった。このペースなら山頂から駐車箇所まで2時間程度で着いてしまうかも。

・谷へ下る尾根も快調に下り、往路の歩幅を狭めた細かなラッセルのおかげで谷から林道への登り返しも予想以上に楽にこなすことができた。林道の横移動が下山では一番足が重かったかも。

・林道を離れて植林された尾根に入れば雪の沈みはさらに減少し歩きやすくなった。そして難なく千島集落へ到着。本当に山頂から2時間もかからなかったのには自分でも驚いた。



・この山行の途中で右目の視界に異変が生じた。視界の上の方が薄赤くなり視界が欠けていた。千島集落へ車を運転した時や出発時には気付かなかったので、歩いている最中に発症したようだ。もしかしたら緑内障? そのまま歩き続けて下山しても症状は変わらず、これ以上悪くなることはなさそうだと思って翌朝は富山市の袖山に登ったが、明らかに視界がおかしい領域が広がっていた。さすがにヤバいと感じながらも袖山に登ってから大急ぎで長野に帰って眼科を受診。目には異常が無く脳神経外科を紹介されてそのまま緊急入院となり11日間の入院生活。病名は「視神経症」。各種検査でも明確な原因は判明しなかったが視神経に酸素、栄養を供給する血管が詰まった「虚血性」と推測された。そのため脳梗塞と同じ治療が行われた。その結果、病状悪化は発症後3日目で止まったが治療による回復は僅かで、視力は大幅に低下したままだった。幸いにして左目はいたって健常なので日常生活に大きな支障は無いが、遠近感に乏しくなったので細かな手作業の効率が低下したり、作業によっては難しくなったりしている。

 退院後に明星の残雪の山に行ったが、雪面の高低が分かりにくいこと、地形図が見ずらいことがあったが、大きな影響は無かった。普通の山行なら問題なさそうである。これからは比較的リスクの低い山に出かけながら限界点を探っていこうと思う。距離感がつかめないので飛び石利用の渡渉やクライミングは厳しいかも。

 

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